11/6総会 記念講演のご案内

先だってご案内いたしました、11月6日(土)に開催する京都大学農学部洛友会の総会と併せて、徳永光俊氏(昭和50年卒業(前大阪経済大学学長)の記念講演が行われます。
徳永氏より講演の要旨をお寄せいただきましたので、ここにご案内いたします。

当日の講演で用いられる予定のスライドのPDFも、このページに掲載いたしますのでご参照ください。

211106_洛友会総会_記念講演スライド (11/5更新)

本報告は、私の大学院以来(1974~)の農史研究をふり返りながら、とくに定年退職後(2020~)に考えていることを中心に、添付の資料にそって話す。

 序章「私の農史研究をふりかえって」は、私の歩みを簡単に紹介する(詳しくは『大阪経大論集』第71巻2号)。私の農史研究の柱の一つは、1977年以来現在まで毎月続けている関西農業史研究会である。間もなく400回である。三橋時雄、飯沼二郎、岡光夫先生にお世話になった。農史ゼミでは三好正喜先生の指導を受けた。もう一つの柱は史資料の博捜と文献考証による「くそ実証」、そして農業現場のフィールドワークである。これらにより帰納的に抽象化する、自前の概念装置で考える、日常の日本語で表現することを心掛けてきた。

 第1章「大和農法の研究」は、主に大学院・ODの時の研究である。奈良盆地中央部の旧家を訪ね歩いて、未発掘の古文書調査をした。大福帳1冊を2~3週間かけて読み、やっと1枚の表が出来上がる。「作りまわし・作りならし」をキーワードにまとめていた。

 第2章「江戸農書、守田志郎、黒正巌の研究」は、ODそして大阪経済大学に勤めだしてから(1985~)の研究である。それまでの大和農法の研究をまとめて1990年に農学博士を取得し、1997年に『日本農法史研究』として公刊した。江戸農書はいくつかの農書   の翻刻、現代語訳などをし、『日本農書全集』第Ⅱ期全37巻の編集委員をした。守田志郎の農法論に私はこだわり続けて、彼の2冊の著作の解説を書いた。黒正巖は、私の所属した農史ゼミの初代教授であり勤務先の初代学長であった。黒正が創立に尽力した日本経済史研究所の所長を1999年から6年務めて、『黒正巌著作集』全7巻や研究書を2冊出した。

 第3章「大阪経済大学の教育」は、2005年から学内の各種役職をし、2010年から2019年まで学長を務めた。ODの苦しい時に拾っていただいた恩返しである。「学生が大学の主人公」を基本に、「そっと手を添え、じっと待つ」の教育哲学で、学生たちの自発的な伸びる力を育てるように努めた。人を育てる教育と作物や家畜を育てる農業は、同じ原理である。私が生活できたのは、学生のおかげである。手抜きは許されない。定年まで34年間勤めた。

 第4章「生きもの循環論からみる農法論」、終章「農業経営史への新たな試み」は、定年後のこの1年半、朝から夕方まで研究三昧、晩はイエ酒耽溺の毎日で考えたことである。

第1の論理的飛躍。「生きもの循環論」である。自発性をもつ生きものたちが協働=相互扶助しながら、食べて食べられてまわる食物連鎖(食べまわし)によって、生きものたちすべてが個と種の再生産を目的として持続し循環していくことである。「農業」とは人類が人為として野生の一部の生きものを作物化・家畜化、土地の耕地化をして、生きもの循環(まわし)を実現するために、生きものたちの自発性を調整・和合(合わせ)させて、人類の個と種の再生産と、本来的には平等(ならし)をめざす営みである。農法は、狭義(農業技術体系)・広義・大義の農法の三層があり、生きまわしの農法である。農法革命により、<天然農法→人工農法→天工農法>と展開し、攪乱・歪曲・亀裂していた生きもの循環が再興する。

第2の大胆な論理的飛躍。私は3つの主体―環境系に関わる狭義・広義の日本農法の原理を、<まわす⇔まわされる>のまわし、<ならす⇔ならされる>のならし、<合わす⇔合わされる>の合わせとして考える。主体から環境に対してはまわすと能動的となり、主体からは環境はまわされると受動的に捉えられるが、逆に環境からみれば主体を能動的にまわしているのであり、主体はまわされている。主体―環境系の相互扶助在地という場での両者の協働的な創発による農法である。この2つの論理的飛躍は、私のカンである。

 驚いた。これは恩師の三橋時雄先生の「農業経営史」ではないか。私は農法論・農法史を45年間ひたすら研究してきたが、農業経営史に原点回帰するとは。黒正巌からの農史講座の伝統と三橋農業経営史を受け継ぎ発展させたいと願う。

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